2011年3月11日金曜日

ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第20回「殺


 前回お伝えしたように,ポール?W.S.アンダーソン監督が実写映画版「バイオハザード」に起用される前,この映画を監督することになっていたのは,ゾンビ映画のオーソリティであるジョージ?A?ロメロ監督だった。
 ロメロ監督は,2000年公開の「URAMI ?怨み?」に続き,久々にゾンビ映画を撮ると周囲にもらしていたそうである。それだけに,バイオハザードの降板劇が相当ショックだったようだ。また,結果的にはスティーブン?ソマーズ監督が撮った「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」を,Universal Picturesからオファーされていたものの,考え方の相違などを理由に降板したこともあり,ビデオゲーム業界とハリウッドの映画産業に大きな失望を抱いていたという。
 Universal Picturesはその後,ロメロ監督に「ランド?オブ?ザ?デッド」を撮らせることで義理立てしたのだが,カプコンとの仕事は「バイオハザード2」のCMが最後になってしまった。
 2005年にGroove GamesからXbox向けに発売された,FPS視点のゾンビゲーム「Land of the Dead: Road to Fiddler's Green」は,「Day of the Zombie」のタイトルで開発されていたものに,あとから映画版権をかぶせたものだ。


 一方,ハリウッドで2本の映画をコケさせたアンダーソン監督は,カプコンからのオファーに大喜びだった。アンダーソン監督自身,好きな映画のジャンルはSFとアクションとホラーで,さらにゲームの「バイオハザード」シリーズのファンでもあったからだ。それだけに彼は,自身のポテンシャルを最大限に発揮するべく決意を固めた。この作品がコケたら,自分に後がないことを理解していたことも大きい。
 アンダーソン監督は,たとえ低予算の作品でも大金をつぎ込んでいるかのように見せることにかけては,高い経験値を持っていた。そこで相棒のジェレミー?ボルトと徹底的なロケハンを行い,ドイツでゲームの雰囲気に近い洋館を探し出し,セット撮影の約8割をドイツで行ったという。これは,ゼロからセットを組み上げるよりも,ロケーションでの撮影のほうが予算を大幅に削減できるからだ。「イベント?ホライゾン」では宇宙船が舞台であったため,すべてセットを組み上げる必要があり,予算に関しては相当苦しい思いをしたようなのだが,こうした経験が生きたということだろう。

 そして地下研究所のシーンでは,構造そのものを広く大きく見せるべく,シーンごとに扉を変えるという工夫をしたり,ゲームと同じように上部からの固定俯瞰視点で撮影したりと,細部へのこだわりと映像マジックを駆使することで,アクション重視の映画を作り上げることに成功した。
 また,ゲームに関しては「バイオハザード2」のほうが好きらしく,列車での戦闘シーンを挿入したり,リッカーを登場させたりと,ゲームの「1」と「2」が入り混じったスタイルになっている点や,ロメロ監督の「死霊のえじき」やヴィンチェンゾ?ナタリ監督の「CUBE」へのオマージュなど,アンダーソン監督が好きな映画からエッセンスを抽出したシーンが多々ある点も見逃せない。

 なお,この映画は「不思議の国のアリスのゾンビ版」が裏テーマになっている。そこでゲームに登場しないオリジナルキャラのアリス役として起用されたのが,ミラ?ジョヴォヴィッチ(正式な発音はヨヴォヴィッチ)である。アンダーソン監督は,オーディションで最初に現れたミラに一目惚れし,即座に主役を決めたそう。その後,正式に籍を入れる形ではないものの,ミラはアンダーソン監督の子供を出産。事実上の夫婦となっている。


 そんなこんなで完成したバイオハザードは,日本を含め世界的な大ヒットを記録。即座に続編「バイオハザードII アポカリプス」の企画が持ち上がったが,ハリウッドにおける2度目の高評価を獲得したアンダーソン監督のもとには,数多くのオファーが再び舞い込み始めた。
 そのうちの一つが,20th Century Fox Filmから飛び込んできた「エイリアンvs.プレデター」だ。アンダーソン監督は悩みに悩んだが,バイオハザードIIではプロデューサーと脚本を担当することにして,エイリアンvs.プレデターの監督を引き受けることに決めた。
 なお,バイオハザードIIは,ヤン?デボン監督作品の多くでセカンドユニット?ディレクターを務めていたアレクサンダー?ウィット監督に依頼。ウィット監督にとっては初監督作品だったが,ゲームの「バイオハザード3」の世界観を踏襲したスタイルは,ゲームファンから好評を得た。とくに,ジル?バレンタインの格好や追跡者など,ゲームと映画がシンクロするような作り込みは絶賛されたものだ。ただ,映画ファンからは,演出の甘さやミラの超人的な立ち振る舞いがゾンビ映画を破綻させているなど,辛口の評価もされていた。
 なお,バイオハザードIIもロケーションはドイツのベルリンを中心に,カナダなど少ない予算で撮影ができるところが選ばれている。


 一方,アンダーソン監督は,これまで経験したことがないほどの多額の予算を使ってエイリアンvs.プレデターを作り上げた。エイリアン狩りをするプレデターを善玉的な扱いにし,人間と共闘させるといった,ある種のギャグ的な要素もふんだんに盛り込まれている。
 映画の評価は賛否両論だったが,「エイリアン2」でアンドロイドを演じたランス?ヘンリクセンを起用し,ウェイランド湯谷社の印象を強くさせたりと,マニアックな試みがあちこちに施されており,個人的にはそういうネタを見つけるたびにニヤリとしてしまったものだ。
 この後,アンダーソン監督は一切タッチしない形で「エイリアンvs.プレデター2」も製作された。が,筆者は未見なのでここでは触れないでおく。PSPでゲーム化もされており,一応購入してあるが,映画を観ていないので未プレイ。


 さて,バイオハザードでドイツの映画界と親交を深めたため,ウーヴェ?ボル監
引用元:RMTの総合サイト【INFO-RMT】

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